「観客との交流」についての覚え書き

[Last up date: 04/03/06]
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いろいろな「観客との交流」

落語の要素で 落語の要素として挙げたもののうち、「交流」については、イメージが 掴みにくいところもあるとおもう。なので落語を含めたいろいろなエンターテイ メントにおける「交流」を思いつくままに列挙してみよう。

落語家では林家三平の客いじりは特筆すべきだろう。 単純な話かけだけでなく、頭に手を当てて「こうやったら笑ってください」と いうギャグは、ギャグだけでなく客を積極的に落語に参加させている。

大道芸では、観客を逃がさないためにも、見物人を巻きこんだ芸を仕掛けること が多い。

少し昔の話だが、70年代の少女漫画では読者と作者の交流コーナーが流行してい たが、漫画の中でも、コマの間の余白で、ストーリーに関係なく日常生活を読者 に直接かたりかける漫画家が何人も居た。これらの流れは一方は月刊OUTなどの 投稿系の雑誌になり他方は士郎正宗等の漫画家に引き継がれている。

ほぼ同じ時期に隆盛を迎えた深夜放送のDJは、それまでの一方的に情報を与える ラジオから、聴取者の葉書を読み、それに反応するラジオへの変化であった。

萩本欽一は、最初は舞台の上のコントだったが、その後、バラエティ経験の無い 芸能人をイジるようになり、最後は普通の素人をイジって笑いを取ることで 絶大な人気を得るようになった。素人をイジる芸の面白さもあったが、 視聴者が自分と同じ人間がTVに出るのを見る参加型な面白さもあった。 これはその後のTVバラエティの隆盛の方向を定めたと思う。ただし 現在のTVバラエティは、素人っぽい芸能人 を使うというちょっと退化した型式におちついているが。

最近の例では神田山陽(3代目)の客は山陽のとちりを聞くのも楽しみの一つとし ているという話がある。芸を観賞する、だけでなく客がハプニングを体験するこ とを積極的に楽もうとしている。

「芸術」と「娯楽」と「交流」

絵画などの芸術は、一方的に受け手となる観客でしかないが、これまでみたとお り娯楽に関しては、一方的な受け手だけではない、演者と交流する、あるいはハ プニングに参加する積極的な「客」としてあることも多い。 この交流の有無が、芸術と娯楽の差なのかもしれない。

また、演芸ではないが、近年カラオケやインターネットなど参加型の娯楽の隆盛も 一つのトレンドである。

落語の凋落と言われるが、実は落語的なものの拡散と浸透が(それゆえにコアとなる ものの凋落が)実体なのではないだろうか。

(2002-11-17)
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